借地権を設定した場合に、必ず認定課税があるかといえば、かならずしもそうではないようです。これは、当事者間で賃貸借契約を結んでいても、借地権を設定しているという意識がない、だけど、無償返還の届出もしていないという場合が多いからでしょうか、借地権は設定しているけれど認定課税があることを知らず、認定課税があるということを知ると、それなら借地権は設定していないとするというケースが多いからでしょうか、あまり認定課税されたという話は聞きません。しかし、認定課税されていないからといって認定課税がないわけではありませんので十分注意してください。認定課税の場面になると、先ほどのような話になるだけなのかもしれません。また、相続の時になって、土地の評価をする際に、借地権が設定されているかどうかという場面でも認定課税の問題がよく出ます。個人としては、借地権は会社にあるとしたいところですが、税務署側としては、本当に借地権を設定しているのですか、本当にそうであるなら、会社に借地権の認定課税をしなければなりませんがいいですか−というように。
権利金と地代の関係は、権利金が多くなれば、地代が少なくなり、権利金が少なくなれば地代が大きくなるという関係にあります。この関係において借地権価額がゼロになる地代を相当の地代といい、その金額は次の算式で求めることとしています。
相当の地代=土地の更地価額×おおむね年6%
つまり、この相当の地代を授受しているときは、借地権価額はゼロとなり、権利金の認定課税は行われないということです。
会社が、借地権の設定をして他人に土地を使用させ、相当の地代を収受することとしたときは、@土地の価額の上昇に応じて順次その収受する地代の額を相当の地代の額に改定する(スライド方式)か、A改定せずに固定する(固定方式)かを借地契約書において定めるとともに、その旨を借地人との連名の書面により、遅滞なく、所轄の税務署長に届け出なければならないとされており、届出のないときは、Aによる方法を選択したものとみなされることとなっています。なお、@の方法を選択した場合の改定は、必ずしも毎年行う必要はなく、おおむね3年以下の期間ごとに改定すればよいとされています。また、地代の改定はしているが、その改定の幅が土地の価額にスライドしておらず、中途半端な額であるというときは、Aの方法を選択しているとみなされます。
法人税では、借地権の価額を次のように計算します。したがって、相当の地代を土地の価額に合わせるスライド方式を選択した場合は、常に相当の地代と同額の実際の地代が支払われますので、借地権はゼロとなりますが、相当の地代の固定方式を選択した場合には、相当の地代は土地の価額の変動にともなって変動しますが、実際の地代は据え置かれますから、借地権の額は相対的に変動することとなります。つまり、固定方式の場合は、土地の価額が上昇すれば借地権価額もそれにつれて上昇することになるわけです。この計算上発生する借地権を自然発生借地権といいますが、この自然発生借地権については、将来その借地権が譲渡されたり、返還されたり、あるいは相続が発生するまでは、課税されずに留保されることとなっています。
借地権価額=更地価額×(1−実際の地代)
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相当の地代
※実際の地代・・・実際に支払う地代(固定方式を選択した場合は、借地権設定時の相当の地代相当額)
相当の地代・・・その時における土地の価額を基に算定した地代
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